講義の動画の途中に問いを入れると、注意がそれにくくなり、テストの成績が上がった、という実験があります。一方で、効果が出なかった実験もあります。効果は、問いの作り方と、出す場面によって変わります。
| 研究 | 対象 | 比べたこと | 結果 |
|---|---|---|---|
| Szpunar ほか(2013年) | 21分のオンライン講義。実験は2つ(32人、48人) | 講義を区切り、区切りごとにテストを挟むかどうか | テストを挟んだ群は、注意がそれた割合が低く、最後のテストの成績が高い |
| Deng ほか(2024年) | 中国の大学2年生 70人。6週間の準実験 | 予習の動画に、選択式の問いを入れるかどうか | 問いを入れた群は、事後のテストの成績が高い。視聴の時間と満足度に差はない |
| Ploetzner(2024年) | 16 の論文に含まれる 17 の研究 | 問いや課題を組み込んだ動画と、そうでない動画 | 全体の効果量は g = 0.522 |
| Beege と Ploetzner(2025年) | 大学生 128人。4分の動画 | 自分のペースで操作できるかどうか、説明を促すかどうか | どちらも、記憶と理解の成績を上げなかった |
効果が出た研究には、どんなものがありますか
講義を区切ってテストを挟んだ実験(2013年)と、予習の動画に問いを入れた準実験(2024年)で、テストや問いを入れた群の成績が高い結果が出ています。
講義を区切り、区切りごとにテストを挟んだ実験(2013年)
Szpunar、Khan、Schacter は、21分のオンライン講義(統計の入門)を4つに区切り、区切りごとにテストを挟む実験を、2つ行いました。1つめの実験の参加者は 32人、2つめは 48人です。2つめの実験では、講義の間に注意がそれていたと答えた割合が、テストを挟んだ群で 19%、内容をもう一度見た群で 39%、何もしなかった群で 41% でした。最後のテストの成績も、テストを挟んだ群が高い結果でした。
出典:Szpunar, Khan, Schacter(2013年)。棒の右端が 100% です。
予習の動画に問いを入れた準実験(2024年)
Deng、Feng、Shen は、中国の大学2年生 70人を対象に、6週間の準実験を行いました。予習の動画に選択式の問いを入れ、授業の初めに振り返った群(28人)は、問いを入れなかった群(42人)より、事後のテストの成績が高い結果でした。視聴の時間と満足度に、差はありませんでした。くじ引きで群を分けた実験ではなく、人数も少ない研究です。
複数の研究をまとめると、どうなりますか
16 の論文に含まれる 17 の研究をまとめた分析では、全体の効果量は g = 0.522 でした。Ploetzner(2024年)が、問いや課題を組み込んだ動画を、再生の操作だけができる動画や、機能のない動画と比べた研究を集めて、分析した結果です。動画を止めずに問いを出すと、学習が妨げられる、とも報告されています。
効果が出なかった研究は、ありますか
あります。Beege と Ploetzner(2025年)は、大学生 128人の実験で、4分の動画について、自分のペースで操作できるかどうかと、途中で自分の言葉で説明するよう促すかどうかを比べました。どちらも、記憶と理解の成績を上げませんでした。説明の促しは、学ぶ人の負荷を高めました。この研究で使われたのは、クイズではなく、説明を促す問いかけです。
ここから、何が言えますか
- 言えること:動画を区切り、区切りごとに答えさせる形は、複数の研究で、注意や成績によい結果が出ています。
- 言えないこと:どんな問いでも効果がある、とは言えません。問いの種類、出す場面、動画を止めるかどうかで、結果が変わります。
- 限界:ここで紹介した研究の対象は大学生で、動画は短いものです。企業の研修で測った結果ではありません。
- 製品との関係:ここで紹介した 4つの研究は、特定の製品の効果を測ったものではありません。
日本の大学では、動画と LMS はどのくらい使われていますか
LMS を全学で導入している4年制大学は 89.5%、動画配信サービスを導入している4年制大学は 51.8% です。大学 ICT 推進協議会(AXIES)の 2023年度の調査(1,171 機関が対象、718 機関が回答、2023年12月〜2024年3月)の結果です。
棒の右端が 100% です。
文部科学省は、オンデマンド型の授業について、毎回の授業に併せて「設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導」を行うことと、学生が意見を交換する機会を確保することを求めています。
関連するページ
出典
- 2013年の実験:Szpunar, Khan, Schacter「Interpolated memory tests reduce mind wandering and improve learning of online lectures」PNAS 110(16): 6313–6317(別のタブで開きます)
- 2024年の準実験:Deng, Feng, Shen「Improving the effectiveness of video-based flipped classrooms with question-embedding」Education and Information Technologies 29(10): 12677–12702(別のタブで開きます)
- 研究のまとめ:Ploetzner「The Effectiveness of Enhanced Interaction Features in Educational Videos: A Meta-Analysis」Interactive Learning Environments 32(5): 1597–1612(抄録)(別のタブで開きます)
- 2025年の実験:Beege, Ploetzner「Learning from interactive video: the influence of self-explanations, navigation, and cognitive load」Instructional Science 53: 99–119(別のタブで開きます)
- LMS と動画配信の導入率:AXIES「高等教育機関における ICT の利活用に関する調査研究(2023年度調査)結果報告書(速報版)」(別のタブで開きます)
- オンデマンド型の授業の要件:文部科学省「大学・高専における遠隔教育の実施に関するガイドライン」2023年3月28日(別のタブで開きます)
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この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 12013年の実験で、講義を区切り、区切りごとにテストを挟んだ群は、どうなりましたか。
2つめの実験で、注意がそれていたと答えた割合は、テストを挟んだ群が 19% で、ほかの2つの群(39%、41%)より低い結果でした。最後のテストの成績も、テストを挟んだ群が高い結果でした。
問い 2この記事のまとめとして、合っているのはどれですか。
効果が出た研究と、出なかった研究があります。問いの種類、出す場面、動画を止めるかどうかで、結果が変わります。
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