ADDIE は授業を設計する手順で、認知負荷は設計するときに気をつける点です。どちらも、反転授業やハイフレックス型のような授業の形ではありません。先に、学生に何を身に付けてほしいかという目的を決めます。次に ADDIE の順に形と動画を決め、動画は認知負荷を抑えるようにつくります。動画の途中に問いを入れると、答えの記録から、学生がどこでつまずいたかを見て授業を直せます。

目的、形、手順、気をつける点は、どう違いますか

4つは、答える問いが違います。目的は「何を身に付けるか」、形は「どう学ぶか」、手順は「どう設計するか」に答えます。気をつける点は「何が学びの妨げになるか」に答えます。第1回で扱った3つの授業の形も、この中では「形」に入ります。

答える問いこの連載の言葉
目的学生は何を身に付けるか学修者本位、学修成果
形(手段)どう学ぶかブレンディッドラーニング、反転授業、ハイフレックス型
手順授業をどう設計し、直すかADDIE
気をつける点何が学びの妨げになるか認知負荷

ADDIE とは、何ですか

授業や研修を設計するときの、5つの段階の頭文字です。分析(Analyze)、設計(Design)、開発(Develop)、実施(Implement)、評価(Evaluate)です。Branch の2009年の本『Instructional Design: The ADDIE Approach(別のタブで開きます)』は、章をこの5つの段階で立てています。

ADDIE は、どの形を選ぶかを決めるものではありません。分析の段階で目的と学生の状況を確かめ、設計の段階で形を選びます。評価の結果は、次の分析と設計に戻します。大学の授業は毎年続くため、評価から直しへ戻る流れが生きます。

図ADDIE の5つの段階と、授業動画で決めること
  1. 分析身に付けてほしいことと学生の状況
  2. 設計授業の形、動画の区切り、問いの場所
  3. 開発動画をつくり、問いと目次を入れる
  4. 実施授業の前や後に、学生が見て答える
  5. 評価答えからつまずきを見て、次へ戻す

当社による整理です。

認知負荷とは何で、授業動画では何に気をつけますか

新しいことを学ぶときに、頭の中の作業の場所にかかる負担です。Sweller、van Merriënboer、Paas が2019年に総説(別のタブで開きます)で整理しています。新しい情報を扱うときの作業記憶は、容量も持続も限られます。

同じ総説は、負担を2つに分けます。内容そのものの複雑さと学ぶ人の知識で決まる負荷(内在的負荷)と、示し方で生まれる負荷(外在的負荷)です。外在的負荷は、設計で変えられます。学ぶ人の知識が増えると、初学者に効く工夫が逆効果になることもあります(熟達化反転効果)。

授業動画では、区切ること、余計なものを足さないこと、学生に考えさせることが挙げられます。研究の結果を、条件と合わせて並べます。

区切るRey ら(2019年)は 56の研究の 88の比較をまとめました。動画を区切ると、記憶と応用の成績に小〜中程度の効果があり、全体の負荷は下がりました。学ぶ時間は延びました。
事前の知識同じ分析では、事前の知識が多い学生ほど、記憶の成績の伸びが大きい結果でした。
考えさせるMayer、Fiorella、Stull(2020年)は、要約や説明を促す問いかけを、授業動画を良くする方法の1つに挙げています。
余計なものを足さない同じ論文は、面白くても本筋から外れた映像を足しても、学びは良くならないとしています。
字幕を添える同じ論文は、話し言葉が学ぶ人の第二言語のとき、字幕を加える方法を挙げています。

Mayer らは、これらの原則がどんな条件で当てはまるかを確かめる研究が、さらに必要だとしています。

動画の途中の問いは、学びとどう関わりますか

反転授業の授業前の動画に問いを入れると、成績が高かった研究があります。Haagsman らの2020年の研究(別のタブで開きます)です。対象は、ユトレヒト大学の分子生物学の1年生です。平均16分の動画に問いを入れた群と、入れない群を比べました。

前の試験の成績で調整したテストの点は、問いを入れた群が 79%、入れない群が 75%でした。一方、問いと同じ内容を測る設問だけを見ると、はっきりした差はありませんでした。問いの後30秒以内に巻き戻す回数が増えており、著者らは、問いが見方を変えた可能性を挙げています。

反転授業のメタ分析も、問いと関わる結果を示しています。van Alten ら(2019年(別のタブで開きます))は、114の研究をまとめました。クイズを加えた場合と、対面の時間を減らさなかった場合に、学びが多い結果でした。Låg と Sæle(2019年(別のタブで開きます))も、学生の準備をテストすると、伸びがやや大きくなる兆しを報告しています。ほかの研究は、動画の途中の問いの研究のコラムにまとめています。

答えの記録から、授業をどう直しますか

問いごとの誤りの多さを見て、つまずいた場面を次の授業で扱います。学生にとっては、答えたことへの返事になります。文部科学省の令和7年度「全国学生調査(別のタブで開きます)」では、適切なコメントが付された提出物の返却があったと答えた大学生は 59%でした。

図学生の答えから、授業を直す流れ

学生

  1. 授業の前に見る目次で見たい場面へ戻れる
  2. 途中の問いに答える答えによって、補う場面へ進む
  3. 授業で取り組むつまずいた所を、演習と議論で扱う

教員

  1. 答えを取り出すCSV や LMS で、学生の答えを見る
  2. 誤りの多い問いを探すどの場面でつまずいたかを見る
  3. 授業と動画を直す説明を足す、区切りや問いを変える

当社による整理です。

直す先は3つあります。次の授業で扱う内容、動画の区切りと説明、問いの文です。誤りが多い理由が、内容の難しさなのか、示し方なのかを分けて考えると、認知負荷の2つの区別が生きます。

hihaho と Sylavids では、何ができますか

hihaho では、動画の途中に選択式や記述式の問い、分かれ道、メニュー(目次)を入れられます。答えによって次に見る場面を変えられます。受講者ごとの点数と合否、答えた内容が記録に残り、CSV で取り出せます。SCORM 1.2、SCORM 2004、xAPI、LTI で LMS に渡せます。AI が問いと採点の観点を下書きし、内容は教員が確かめて直します。AI アシスタントで字幕の生成と翻訳ができます。

Sylavids は、PowerPoint や PDF の資料から、ナレーションのついた説明動画と字幕のファイルをつくる AI 動画生成サービスです。日本語、英語、中国語の動画をつくれます。資料を直せば、撮り直さずに動画をつくり直せます。評価のあとに説明を直す流れと組み合わせられます。

誰がどう答えたかは、学生の個人情報になります。個人情報保護法(別のタブで開きます)の第17条は利用目的をできる限り特定すること、第21条は利用目的を本人に通知し、又は公表することを定めています。答えを成績に使うのか、授業の改善だけに使うのかを、先に学生に伝えます。

このコラムで言えないことは何ですか

  • 動画に問いを入れれば、成績が上がるとは言い切れません。紹介した研究は1つの大学の1つの科目のもので、問いと同じ内容の設問では差が出ていません。
  • 表の工夫が、どの科目や学生にも同じように効くとは言い切れません。事前の知識によって、効き方が変わります。
  • hihaho の記録だけで、学生の理解の深さが分かるとは言い切れません。選択式の答えは、理解の一部を示すものです。
  • 記録の扱いについて、大学ごとに適用される規程や手続きまでは言い切れません。学内の担当部署に確かめてください。

一緒に、授業の目的から動画の設計を考えませんか

どこで動画を区切り、どこに問いを置き、答えをどう次の授業に生かすかは、科目と学生で変わります。お手元のシラバスと授業のスライドから、ADDIE の順に一緒に整理します。

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出典

確かめる

この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。

問い 1ADDIE について、正しいのはどれですか。

問い 2認知負荷理論で、示し方で生まれ、設計で変えられる負荷はどれですか。

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