インタラクティブ動画(この記事では、問いや分かれ道を組み込んだ動画)が、ふつうの動画と違う点は、3つです。視聴者が、画面の中で答えたり選んだりできること。答えや選択に応じて、進み方を変えられること。視聴したかどうかに加えて、何を答え、どれを選んだかを、記録に残せること。
一時停止や再生位置の移動は、ブラウザーの標準の再生機能にもあり、ふつうの動画でもできます。3つの違いは、優劣を示すものではありません。研究は、平均では効果を報告していますが、効果が出なかった研究もあります。
ふつうの動画
- 再生する止める、戻す、位置を動かす
- 見る、聞く画面の中で答える場面はない
- 残る記録視聴回数、再生時間など
インタラクティブ動画
- 再生する止める、戻す、位置を動かす
- 問いや選択肢が出る決めた時刻に、画面に示す
- 答える、選ぶ答えや選択で、進み方を変えられる
- 残る記録加えて、回答、合否、得点など
当社による整理です。緑の枠は、残る記録です。記録の中身は、使うシステムによって変わります。
「インタラクティブ動画」という言葉は、何を指しますか
「インタラクティブ動画」は、視聴者が操作したり答えたりする要素を加えた動画を指します。どの要素を指すかは、論文によって違います。
2004年の実験(Schwan と Riempp)は、止める、もう一度見る、逆に再生する、速さを変える、という操作ができる動画を、インタラクティブと呼びました。
2023年のレビュー(Fonseca ほか)と 2024年のメタ分析(Ploetzner)は、問いや課題、動画内クイズなどの、組み込まれた働きかけを扱っています。教育の研究には、要素を、移動のためのものと、記憶と理解を助けるためのものに分ける整理があります(Sauli ほか、2018年)。
| 動画の途中の問い | 再生の途中の決めた時刻に、画面に出す問いです。選択式、穴埋め、自由記述などの形式があります。 |
|---|---|
| 分岐(分かれ道) | 視聴者の選択によって、次に示す内容と結末が変わります。問いの正誤で、動画の別の位置に移る設定を持つ道具もあります。 |
| 目次・章 | 動画を区間に分けて題を付け、見たい場面へ移る目印にします。 |
研究では、何が分かっていますか
平均では、動画そのもの、区切り、途中の問いのそれぞれに、効果が報告されています(効果が出なかった研究は、最後の節)。比べている相手は研究ごとに違うので、効果量 g の大きさは、並べて比べるものではありません。効果量 g は、2つの群の成績の差の大きさを、成績のばらつきを物差しにして表した数です。
- 動画そのもの:大学での動画の効果の系統的レビュー(Noetel ほか、2021年。無作為化の試験 105件、学生 7,776人)では、動画を既存の教え方と置き換えると小さな改善(g = 0.28)、既存の教え方に足すと大きな効果(g = 0.80)でした。比べた相手は、ふつうの動画ではありません。
- 区切りと操作:区切りの効果のメタ分析(Rey ほか、2019年。56 の研究、88 の比較)は、マルチメディアの教材を対象にしています。学ぶ人のペースで進む区切りに分けて示すと、続けて示す場合より、記憶と応用の成績に小〜中の効果があり、学習の時間は延びました。ロープの結び方の実験(Schwan と Riempp、2004年)では、操作できない動画の群のほうが、習得にかなり長い時間がかかりました。
- 途中の問い:問いや課題を組み込んだ動画を、再生の操作だけの動画や、操作の機能のない動画と比べたメタ分析(Ploetzner、2024年。16 の論文、17 の研究)は、全体の効果量を g = 0.522 と報告しました。動画を止めずに問いを出すと学習が妨げられる、という条件も報告しています。教室でのテスト全般のメタ分析(Yang ほか、2021年。222 の研究、48,478人)は g = 0.499 で、動画の中の問いに限った分析ではありません。
残る記録は、どう違いますか
ふつうの動画で残るのは、視聴の量の記録です。問いを入れると、答えの中身を記録に加えられます。
視聴の量の例として、YouTube のヘルプは、視聴回数、総再生時間、平均の視聴時間を説明しています。答えの中身は、学習の記録の規格 xAPI では、得点、合否、完了、回答、かかった時間を、1件の記録の結果として加えられます。SCORM 2004 にも、設問ごとの回答を記録する項目があります。
xAPI の Video Profile が決めているのは、動画プレーヤーの操作の記録です。Video Profile が定める動詞は、再生した、一時停止した、再生位置を動かした、の3つです。ADL の GitHub リポジトリで、v1.0.3(2019年5月10日付)が公開されています。選んだ分かれ道の記録は、Video Profile には定められていません。
学習の記録は、SCORM の教材では LMS に、xAPI では LRS に保管します。どこに残り、だれが見られるかは、使うシステムごとに確かめる点です。
つくるときに、何が増え、何に気をつけますか
増えるのは、時間と手間です。反転授業でのインタラクティブ動画のレビュー(Fonseca ほか、2023年)は、教員と学生の時間と手間が増えることを、最も大きな課題に挙げています。気をつける点は、問いの出し方、分かれ道、問いの画面の操作です。
- 問いの出し方:問いのあいだ動画を止めるかどうか(Ploetzner のメタ分析が報告した条件)。
- 分かれ道:Lacey ほか(2024年)の研究では、学生は、大事な内容を見落とさないための支えを求めました。
WCAG 2.2(別のタブで開きます) の達成基準は、インタラクティブ動画を名指ししていません。次は、問いの画面への、当社による当てはめです。例外は、達成基準の本文で確かめてください。
- 2.1.1 キーボード、2.1.2 キーボードトラップなし(どちらもレベル A):キーボードで問いの画面に入り、答え、出られること。
- 2.2.1 タイミング調整可能(Timing Adjustable。レベル A):答える時間に制限を付けるときは、解除、調整、延長のいずれかができること。
- 2.5.7 ドラッグ動作(レベル AA):ドラッグで答える問いに、ドラッグしない方法があること。
収録済みの動画の字幕(達成基準 1.2.2、レベル A)は、どちらの動画にも関係します。
ふつうの動画で足りるのは、どんなときですか
ふつうの動画で足りるのは、次の4つのときです。紹介した研究をもとにした、当社の整理です。
- 短い動画で、基本の内容を筋道立てて伝えるとき。分かれ道のある動画の研究(Lacey ほか)では、多くの学生が、基本の内容には一本道のほうが筋道が分かりやすいと感じました。
- 手順を見せ、止めて見直せれば足りるとき。
- 問いや課題を、動画の外(小テスト、授業、実習)で用意できるとき。
- 答えの中身を、記録に残す必要がないとき。
- 1問いを置く場所動画の中か、小テストや授業か
- 2残したい記録答えの中身が要るか、どこに残るか
- 3かけられる手間問いや分かれ道を用意する時間
- 4操作の配慮キーボード、制限時間、ドラッグ
当社による整理です。
言い切れないことは、何ですか
「インタラクティブ動画のほうが、学習効果が高い」とは、一律には言えません。効果の報告は条件つきで、次の3つの研究では、効果が出ないか、小さい結果でした。
- 米国の大学生 195人の実験(Welhaf ほか、2022年)は、講義動画の途中のテストを再学習と比べました。課題と関係のない考えは減りましたが効果は小さく、学習への効果は統計的に確かめられませんでした。
- 英国の研究者による、生物科学の学部生の研究(Lacey ほか、2024年)では、分かれ道のある動画は、一本道の動画と比べて、学習の伸びを高めませんでした。
- ドイツの大学生 128人の、約4分の動画の実験(Beege と Ploetzner、2025年)では、自分のペースの操作も、途中で説明を促す問いかけも、成績を上げませんでした。
この記事で対象を挙げた研究は、大学でのものです。企業の研修での効果、制作にかかる時間の差、分かれ道のある動画の効果は、紹介した研究からは言えません。紹介した研究は、特定の製品の効果を測ったものではありません。
関連するページ
- hihaho:動画の途中に問いや分かれ道を入れ、答えと視聴の記録を残せるインタラクティブ動画
- コラム「動画の途中に問いを入れると、学習は変わりますか」:途中の問いの効果を調べた研究を、対象と結果に分けて紹介
- コラム「動画の視聴の記録は、SCORM と xAPI でどこまで残せますか」:SCORM と xAPI で残せる、視聴の記録の範囲
- 用語集:技術文書、研修、動画、AI の用語を、業界と業務で絞り込める一覧
出典
- 要素の2つの区別と、2025年の実験:Beege, Ploetzner「Learning from interactive video: the influence of self-explanations, navigation, and cognitive load」Instructional Science 53: 99–119(2025年)(別のタブで開きます)
- 問いや課題を組み込んだ動画のメタ分析:Ploetzner「The Effectiveness of Enhanced Interaction Features in Educational Videos: A Meta-Analysis」Interactive Learning Environments 32(5): 1597–1612(ERIC の抄録)(別のタブで開きます)
- 2004年の実験(操作できる動画):Schwan, Riempp「The Cognitive Benefits of Interactive Videos: Learning to Tie Nautical Knots」Learning and Instruction 14(3): 293–305, 2004(ERIC EJ731648)(別のタブで開きます)
- 大学での動画の効果の系統的レビュー:Noetel, Griffith, Delaney, Sanders, Parker, del Pozo Cruz, Lonsdale「Video Improves Learning in Higher Education: A Systematic Review」Review of Educational Research 91(2): 204–236, 2021(オーストラリアカトリック大学のリポジトリの抄録)(別のタブで開きます)
- 区切りの効果のメタ分析:Rey, Beege, Nebel, Wirzberger, Schmitt, Schneider「A Meta-analysis of the Segmenting Effect」Educational Psychology Review 31(2): 389–419, 2019(別のタブで開きます)
- 教室でのテストの効果のメタ分析:Yang, Luo, Vadillo, Yu, Shanks「Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review」Psychological Bulletin 147(4): 399–435, 2021(香港浸会大学の研究者情報ページの抄録)(別のタブで開きます)
- 途中のテストの効果が小さかった実験:Welhaf, Phillips, Smeekens, Miyake, Kane「Interpolated testing and content pretesting as interventions to reduce task-unrelated thoughts during a video lecture」Cognitive Research: Principles and Implications 7: 26, 2022(別のタブで開きます)
- 分かれ道のある動画と一本道の動画の比較:Lacey, Francis, Smith「Redefining online biology education: a study on interactive branched video utilisation and student learning experiences」FEBS Open Bio, 2024(シェフィールド・ハラム大学のリポジトリ)(別のタブで開きます)
- よく使われた機能と、時間と手間の課題:Fonseca, Mira da Silva, Sá「Flipped learning with interactive videos: a systematic literature review」International Journal of Technology Enhanced Learning 15(4), 2023(出版社のページの抄録)(別のタブで開きます)
- 動画の配信で分かる指標の例:YouTube ヘルプ「Understand your YouTube engagement」(別のタブで開きます)
- xAPI の Video Profile:ADL: xapi-authored-profiles「video/v1.0.3/video.jsonld」(xAPI Video Profile v1.0.3)(別のタブで開きます)
- WCAG 2.2 の達成基準:W3C: Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2(別のタブで開きます)
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この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1インタラクティブ動画とふつうの動画の違いとして、この記事が挙げているものは、どれですか。
違いは、画面の中で答えたり選んだりできること、答えや選択で進み方を変えられること、答えを記録に残せることの3つです。一時停止や再生位置の移動は、ふつうの動画でもできます。
問い 2「インタラクティブ動画のほうが、学習効果が高い」と一律には言えないのは、なぜですか。
メタ分析は平均で効果を報告していますが、動画を止めずに問いを出すと学習が妨げられる、という条件があります。効果が出なかった研究や、効果が小さかった研究もあります。
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