募集のときに伝える労働条件と、求人の情報を正確で新しく保つことは、職業安定法が定めています。新卒の採用では、伝え始める時期と学生の情報の使い方に、政府の要請、三省合意、就職問題懇談会の要請があります。仕事の良い面と悪い面を両方伝える方法(RJP)には、離職の少なさと関係するという研究と、仕事そのものの設計のほうが効果が大きかったという研究があります。
入社して 3年のうちに、どれだけの人が辞めていますか
2022年3月に卒業して就職した人の、就職後 3年以内の離職率は、大学卒で 33.8%、高校卒で 37.9%です。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(別のタブで開きます)(2025年10月24日 公表)の数字です。2026年10月時点で直近です。
| 事業所の規模 | 大学卒 | 高校卒 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 57.5% | 63.2% |
| 5〜29人 | 52.0% | 54.6% |
| 30〜99人 | 41.9% | 45.2% |
| 100〜499人 | 33.9% | 36.7% |
| 500〜999人 | 31.5% | 29.9% |
| 1,000人以上 | 27.0% | 26.3% |
労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告は、大学を卒業して正社員として就職した人について、採用前の情報と現実の不一致を分析しています。もとは、2018年8月の Web モニター調査(分析対象 5,631名)です。一致しなかった項目は「労働時間の長さ」が最も多く、男性は 932人中 167人、女性は 633人中 140人でした。労働時間の長さ、給与の金額、仕事内容のどれでも、一致しなかった人の 3年以内離職率は、男性全体・女性全体より高い、としています。本人の振り返りによる調査で、因果は言えません。
募集のときに、法令は何を伝えるよう求めていますか
法令が求めているのは、労働条件の明示と、求人の情報を正確で新しく保つことです。
| 場面 | 根拠 | 求めていること |
|---|---|---|
| 労働者を募集するとき | 職業安定法 第5条の3 | 業務の内容、賃金、労働時間などの労働条件を明示する |
| 求人の情報を広告などで出すとき | 職業安定法 第5条の4 | 虚偽の表示、誤解を生じさせる表示をしない。正確かつ最新の内容に保つ |
| 新卒者などの応募者から求めがあったとき | 若者雇用促進法 第13条 | 青少年雇用情報を、3つの類型ごとに 1つ以上提供する |
2024年4月1日からは、募集のときに明示する事項に、業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準が加わりました。
青少年雇用情報の項目には、直近の 3事業年度の採用者数と離職者数、研修の有無と内容、月平均の所定外労働時間などがあります。
2026年10月1日からは、男女雇用機会均等法 第13条が、求職者等へのセクシュアルハラスメントについて、相談の体制の整備などを事業主に求めています。厚生労働省は、面談の時間や場所、使う SNS の種類などのルールを、求職者等にも周知することを挙げています。
新卒の採用では、いつから、何を伝えてよいですか
2027年度卒業・修了予定者では、広報活動の開始は卒業・修了年度に入る直前の 3月1日以降、採用選考活動の開始は 6月1日以降、正式な内定日は 10月1日以降です。政府が、2026年3月24日に、経済団体・業界団体などの長に要請した日程です。同じ要請は、遠隔地の学生に対するオンラインでの説明会の実施も求めています。
広報活動の開始日より前の情報発信については、大学側の団体でつくる就職問題懇談会が、同じ日に、企業などへ要請しています。ホームページの文字、写真、動画など、不特定多数に向けた情報発信にとどめ、学生情報の取得や、学生情報を活用した活動を行わないよう求めています。会社説明会などの催しは、その後の選考活動に影響しないと明示することも、就職問題懇談会の要請にあります。
インターンシップと呼ぶのは、三省合意(文部科学省・厚生労働省・経済産業省。2022年6月13日 一部改正)が示す 4つの類型のうち、タイプ3 とタイプ4 です。三省合意は、タイプ3 のインターンシップで取得した学生情報に限り、3月以降は広報活動に、6月以降は採用選考活動に使用できる、としています。タイプ1 のオープン・カンパニーと、タイプ2 のキャリア教育で取得した学生情報は、採用活動に使用しないよう、就職問題懇談会が求めています。
- 広報活動の開始日より前不特定多数への情報発信就職問題懇談会の要請。ホームページの文字、写真、動画など
- 3月1日以降広報活動の開始タイプ3 の学生情報を、広報活動に使用できる(三省合意)
- 6月1日以降採用選考活動の開始タイプ3 の学生情報を、採用選考活動に使用できる(三省合意)
- 10月1日以降正式な内定日政府の要請による日程
3つの日程は政府の要請、開始日より前の情報発信は就職問題懇談会の要請、学生情報の使用は三省合意によります。緑の枠は、広報活動の開始です。条件は、それぞれの文書で確かめてください。
仕事の良い面と悪い面を伝えると、離職は減りますか
減るとは言い切れませんが、離職の少なさと関係した、という研究はあります。RJP は、Realistic Job Preview の略で、応募する人に、組織や仕事の実態を、良い面だけでなく悪い面も含めて伝えることです。形は、パンフレット、ビデオ、説明会、面接などです。
| メタ分析 | まとめた対象 | 報告したこと |
|---|---|---|
| McEvoy と Cascio(1985年) | 現場の実験 20、6,492人 | 離職を減らす効果は、職務充実(job enrichment)が RJP の約 2倍 |
| Phillips(1998年) | RJP の研究 40 | RJP は、離職の少なさと関係した |
| Earnest ほか(2011年) | 研究 52、約 17,000人 | 自発的な離職に影響する主な経路は、組織が正直だという受け止め |
2011年のメタ分析は、最も効果的な設計は、入社後に口頭か文書で行い、組織の正直さを示すものかもしれない、としています。
会社の説明を動画で行うと、何が変わりますか
伝える手段によって、受け止めが変わったという実験があります。Allen ほか(2004年)は、大学生 989人に、同じ採用のメッセージを、対面、映像、音声、文章で伝えました。情報の量などの受け止めが、手段によって変わりました。Frasca と Edwards(2017年)は、342人に、Facebook、動画、文章のウェブページで見せました。情報源の信頼性などの受け止めに、有意な差がありました。
自社の採用で、何を確かめればよいですか
確かめるのは、伝えている情報がいつの時点のもので、実際の仕事とどこが違うかです。厚生労働省のリーフレットは、正確かつ最新に保つ措置の例に、募集の終了や内容の変更を速やかに反映することと、いつの時点の情報かを明らかにすることを挙げています。
次の 5つは、当社が整理した問いです。
- 求人や会社説明の資料の賃金や労働時間は、いつの時点の情報ですか。変わったら、だれが直しますか。
- 入社の前に伝えている労働時間は、実際とどこが違いますか。悪い面も伝えていますか。
- 採用者数と離職者数、研修、所定外労働時間を、応募者に求められたら出せますか。
- 広報活動の開始日より前に公開する動画やページで、学生の情報を集めていませんか。
- 面談の時間や場所、連絡に使う SNS のルールを、応募する人にも知らせていますか。
当社が扱う製品では、どうなっていますか
ここからは、当社が扱う製品の説明です。
hihaho は、動画の途中に問いや分かれ道を入れ、視聴者の答えと視聴の記録を残せるインタラクティブ動画のプラットフォームです。会社説明の動画を、職種ごとに分けられます。応募する人が関心のある職種や部署を選ぶと、その説明へ進む動画にできます。動画を撮影したり編集したりするための製品ではありません。元の動画は、別に用意します。
Sylavids は、PowerPoint や PDF の資料から、ナレーションのついた説明動画をつくるサービスです。AI が書いた原稿と音声は下書きで、公開の前に、内容と読み方を人が確かめて直します。
製品が決まっていなくても、いまの状況と課題から相談できます。お問い合わせのページで、状況をお知らせください。
言い切れないことは何ですか
- 仕事の実態を伝えれば離職が減る、とは言い切れません。紹介した 3つのメタ分析が、日本の新卒の採用にも当てはまるとは、言い切れません。
- 動画で伝えれば離職が減る、とも言えません。手段を比べた 2つの実験が扱ったのは、入社前の受け止めなどで、入社後の定着ではありません。どの手段がよいかも、言い切れません。
- 離職率は、雇用保険の届けから推定した数字で、辞めた理由を示しません。規模による差は、伝え方の差を示すものではありません。
- 政府の要請、三省合意、就職問題懇談会の要請は、法令ではありません。
- 個別の表示が法令に合うかは、事案ごとの判断になります。法的な助言ではありません。
関連するページ
- hihaho:動画の途中に問いや分かれ道を入れ、答えと視聴の記録を残せるインタラクティブ動画
- Sylavids:PowerPoint や PDF の資料から、ナレーションのついた説明動画をつくるサービス
- コラム「動画の途中に問いを入れると、学習は変わりますか」:動画の途中に入れる問いについて、研究で分かっていることの整理
- 用語集:採用、営業、サポートなどの業務の用語を、業界と業務で絞り込める一覧
出典
- 労働条件の明示と、求人の情報の的確な表示(第5条の3、第5条の4):e-Gov 法令検索: 職業安定法(昭和22年法律第141号)(別のタブで開きます)
- 2024年4月1日からの明示事項の追加:厚生労働省: 職業安定法施行規則改正|労働条件明示等(別のタブで開きます)
- 求人の情報を正確かつ最新に保つ措置の例:厚生労働省: 職業安定法 改正のポイント(リーフレット)(別のタブで開きます)
- 青少年雇用情報の提供(第13条):e-Gov 法令検索: 青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和45年法律第98号)(別のタブで開きます)
- 青少年雇用情報の項目(第3条、第4条):e-Gov 法令検索: 青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(平成27年厚生労働省令第155号)(別のタブで開きます)
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策(第13条):e-Gov 法令検索: 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)(別のタブで開きます)
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の開始日と、ルールの周知:厚生労働省 Web マガジン: 求職活動等をする方を守るために ― 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の新ルール(2026年9月1日)(別のタブで開きます)
- 新卒の採用の日程(政府の要請)と、就職問題懇談会の企業等への要請:内閣官房: 2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について(2026年3月24日。政府の要請事項と、就職問題懇談会「令和9年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(企業等への要請)」を収める PDF)(別のタブで開きます)
- インターンシップの類型と、学生情報の扱い(三省合意):文部科学省・厚生労働省・経済産業省: インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方(平成9年9月18日。令和4年6月13日 一部改正)(別のタブで開きます)
- 就職後 3年以内の離職率:厚生労働省: 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します(2025年10月24日)(別のタブで開きます)
- 採用前の情報と現実の不一致:労働政策研究・研修機構(JILPT): 第108回労働政策フォーラム(2020年2月13日)研究報告2「若者の離職状況に関する分析」(別のタブで開きます)
- 不一致の報告のもとになった調査:労働政策研究・研修機構(JILPT): 調査シリーズ No. 191「第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」(2019年3月29日)(別のタブで開きます)
- RJP の定義と形:堀田聰子「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方 ― RJP(Realistic Job Preview)を手がかりにして」日本労働研究雑誌 No.567(2007年10月)、60〜75ページ(労働政策研究・研修機構)(別のタブで開きます)
- 職務充実と RJP を比べたメタ分析:McEvoy, Cascio「Strategies for reducing employee turnover: A meta-analysis」Journal of Applied Psychology 70(2): 342–353, 1985(ユタ州立大学のリポジトリの書誌と要旨)(別のタブで開きます)
- RJP と離職などの関係のメタ分析:Phillips「Effects of realistic job previews on multiple organizational outcomes: A meta-analysis」Academy of Management Journal 41(6): 673–690, 1998(ペンシルベニア州立大学の書誌と要旨)(別のタブで開きます)
- RJP が離職に影響する経路のメタ分析:Earnest, Allen, Landis「Mechanisms linking realistic job previews with turnover: A meta-analytic path analysis」Personnel Psychology 64(4): 865–897, 2011(ウォーリック大学のリポジトリの書誌と要旨)(別のタブで開きます)
- 採用の説明を 4つの手段で伝えた実験:Allen, Van Scotter, Otondo「Recruitment communication media: Impact on prehire outcomes」Personnel Psychology 57(1): 143–171, 2004(ウォーリック大学のリポジトリの書誌と要旨)(別のタブで開きます)
- Facebook、動画、文章のウェブページを比べた実験:Frasca, Edwards「Web-based corporate, social and video recruitment media: Effects of media richness and source credibility on organizational attraction」International Journal of Selection and Assessment 25(2): 125–137, 2017(DOI)(別のタブで開きます)
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問い 12027年度卒業・修了予定者の採用で、広報活動の開始日より前の情報発信を、不特定多数に向けたものにとどめるよう求めているのは、どれですか。
ホームページの文字、写真、動画など、不特定多数に向けた情報発信にとどめるよう求めているのは、就職問題懇談会の要請です。政府の要請は、広報活動、採用選考活動、正式な内定日の日程を示しています。
問い 2RJP の研究について、本文の説明に合うものはどれですか。
メタ分析は、RJP が離職の少なさと関係したと報告しています。離職を減らす効果は職務充実が RJP の約 2倍だった、というメタ分析もあります。
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