動画の形式は、コンテナ形式(入れ物)とコーデック(圧縮の方式)の2つに分けて、載せる先と再生する側が対応しているかを確かめて選びます。拡張子(.mp4、.mov、.webm)が示すのはコンテナ形式で、コーデックは別に決まります。
MDN は、1つの形式しか用意できないなら、対応する機器とブラウザーが最も広い形式を選ぶよう勧めています。動画の例には、MP4 を挙げています。
コンテナ形式とコーデックは、何が違いますか
コンテナ形式は、映像や音声などのデータの流れ(ストリーム)とメタデータを、1つのファイルにまとめる形式です。コーデックは、映像や音声のデータを符号化(エンコード)し、復号(デコード)するプログラム、アルゴリズム、または装置です。同じ MP4 のファイルでも、中の映像が H.264 のことも AV1 のこともあります。
MDN の例では、圧縮していない 1920×1080 の映像は、1画素を 4 バイト、毎秒 30 フレームとすると、1秒で 248,832,000 バイトになります。
圧縮したデータ
- 映像のコーデックH.264、H.265、AV1、VP9 など
- 音声のコーデックAAC、Opus、MP3 など
入れ物
- MP4
- MOV
- WebM
- Matroska
再生する側
- ブラウザー中のコーデックへの対応が要る
- 再生する機器中のコーデックへの対応が要る
当社による整理です。緑の枠は、ファイルの拡張子が示す部分です。
主なコンテナ形式は、誰が定めていますか
主なコンテナ形式を定めているのは、ISO/IEC、IETF、Apple、WebM Project です。
| 定めた団体・文書 | 拡張子 | 時期 | |
|---|---|---|---|
| MP4 | 国際規格 ISO/IEC 14496-14 | .mp4 | 2003年に初めて発行。第3版は 2020年1月発行 |
| MOV | Apple(QuickTime ファイルフォーマット) | .mov | 1991年に登場(米国議会図書館の資料) |
| WebM | WebM Project(Google が支援) | .webm | 2010年に登場(MDN) |
| Matroska | IETF の RFC 9559 | .mkv | RFC は 2024年10月 |
規格の版、ブラウザーの対応、各社の推奨の値は、どれも 2026年10月時点のものです。
WebM は、Matroska の一部を取り出して決めた形式です。
コンテナ形式に入るコーデックは、形式ごとに違います。
| MP4 | MDN の表では、映像は H.264、H.265、AV1、VP9 など。音声は AAC、MP3、Opus、FLAC。 |
|---|---|
| MOV | MDN の表では、映像は H.264、H.265 など。音声は AAC、ALAC など。 |
| WebM | WebM Project の文書では、映像は VP8 または VP9、音声は Vorbis または Opus。MDN は、AV1 の映像も挙げています。 |
映像と音声のコーデックは、誰が定めていますか
主なコーデックを定めているのは、ITU-T、ISO/IEC、IETF、AOMedia、WebM Project です。
| 種類 | 定めた団体・文書 | 版と時期 | |
|---|---|---|---|
| H.264(AVC) | 映像 | ITU-T 勧告 H.264、ISO/IEC 14496-10 | 最初は 2003年5月承認。有効な版は 2026年6月承認 |
| H.265(HEVC) | 映像 | ITU-T 勧告 H.265、ISO/IEC 23008-2 | 最初は 2013年4月承認。有効な版は 2026年1月承認 |
| H.266(VVC) | 映像 | ITU-T 勧告 H.266、ISO/IEC 23090-3 | 最初は 2020年8月承認。有効な版は 2026年1月承認 |
| AV1 | 映像 | Alliance for Open Media(AOMedia) | 2018年3月28日に仕様を公開 |
| VP9 | 映像 | WebM Project | 2013年6月17日に利用開始 |
| AAC | 音声 | ISO/IEC 13818-7、ISO/IEC 14496-3 | 13818-7 は 2006年、14496-3 は 2019年の版 |
| Opus | 音声 | IETF の RFC 6716 | 2012年9月 |
| MP3 | 音声 | ISO/IEC 11172-3、ISO/IEC 13818-3 | 11172-3 は 1993年発行 |
書き出しの設定に出てくる言葉は、何を表しますか
- 解像度:1つのフレームを構成する画素の数です。1920×1080 のように、横×縦で表します。
- フレームレート:1秒あたりに表示するフレームの数です。単位は fps です。
- ビットレート:映像や音声の1秒ぶんに使うデータの量です。kbps や Mbps で書きます。
MDN は、解像度、フレームレート、ビットレートのどれも、高いほどファイルが大きくなると説明しています。
Web のページでは、どう再生されますか
Web のページでは、WHATWG の HTML 標準が定める video 要素で再生します。中に source 要素を複数置くと、ブラウザーは順に調べ、再生できる最初のものを使います。
ブラウザーの対応は変わります。MDN の表(別のタブで開きます)で確かめます。MDN は次のように示しています。
- MP4 と WebM は、主要なブラウザーの全てが対応するコンテナ形式です。MOV は、一覧の表で、Safari の古い版と、QuickTime プラグインに対応していたブラウザーだけです。
- H.264 と VP9 は、Chrome、Edge、Firefox、Opera、Safari の全ての版が対応します。
- H.265 は、ブラウザーの版、OS、機器のハードウェアによって、対応が分かれます。
- AV1 は、Chrome、Edge、Firefox が対応します。Safari は、17 以降の一部の機器で対応します。
MDN が一般の Web サイトの動画に挙げる組み合わせは、1番めが WebM+AV1+Opus、2番めが MP4+H.264+AAC です。2番めは、主要なブラウザーの全てが対応すると説明しています。
研修や操作説明の動画では、何を確かめますか
研修や操作説明の動画では、機器が記録する形式、載せる先が受け付ける形式、変換の種類を確かめます。設定の値は、載せる先の公式の手引きで確かめます。
- 1撮影・録画機器が記録する形式を確かめる
- 2エンコードコーデックの方式で圧縮する
- 3ファイルコンテナ形式に映像と音声をまとめる
- 4載せる先受け付ける形式を公式の文書で確かめる
- 5再生再生する側がコーデックに対応する
当社による整理です。緑の枠は、形式を決める前に確かめるところです。
- 撮影や録画の機器が記録する形式。Apple のサポート文書によると、同社の対応する機器のカメラは、設定によって、動画を H.265 か H.264 で記録します。MDN は、macOS の録画ソフトウェアが MOV で出力することが多いと説明しています。
- 載せる先が受け付ける形式や、再生できる形式。YouTube と Microsoft は、その一覧を公開しています。Moodle の文書は、対応する拡張子の設定が、サイト管理の画面にあると説明しています。
- 変換の種類。FFmpeg の文書は、デコードとエンコードをしないでコンテナ形式を替える方法では、画質は落ちないと説明しています。コーデックも替えるときは、エンコードし直します。
YouTube のヘルプは、アップロードする動画の推奨の設定に、MP4、H.264 と、音声の AAC-LC や Opus などを挙げています。解像度 1080p の動画のビットレートは、標準のフレームレートで 8 Mbps、高いフレームレートで 12 Mbps を推奨しています。この値は、YouTube が SDR と表記する動画のものです。HDR(より広い明るさの幅を扱う方式)の動画には、別の値を示しています。
Microsoft のサポート文書は、Microsoft 365 での再生に向く設定として、MP4、H.264、30 fps を推奨しています。ビットレートは、1080p でおよそ 8 Mbps 以下です。
言い切れないことは、何ですか
- 「MP4 なら、どこでも再生できる」とは言い切れません。中のコーデックが H.265 や AV1 だと、機器やブラウザーによって再生できないことがあります。
- 拡張子を .mov から .mp4 に書き換えても、変換にはなりません。Apple の文書は、2つを別の種類のファイルと説明しています。
- YouTube の推奨の値は、アップロードする動画のための値です。ほかの載せる先に、そのまま当てはまるとは限りません。
- 特許と利用の条件は、コーデックごとに違います。MDN は、H.264 の商用の利用には許諾が要ると書いています。AOMedia は、AV1 を、特許の使用料を求めない方針で提供するとしています。第三者の特許については、これらの文書からは分かりません。これらは各文書の記述で、当社の法的な判断ではありません。
- H.266 のブラウザーでの対応と、Matroska に入るコーデックは、この記事では扱っていません。
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出典
- コンテナ形式の説明と、ブラウザーの対応:MDN Web Docs: Media container formats (file types)(別のタブで開きます)
- 映像のコーデックの説明と、ブラウザーの対応:MDN Web Docs: Web video codec guide(別のタブで開きます)
- 音声のコーデックの説明:MDN Web Docs: Web audio codec guide(別のタブで開きます)
- MP4 の規格:ISO: ISO/IEC 14496-14:2020 Information technology — Coding of audio-visual objects — Part 14: MP4 file format(別のタブで開きます)
- MOV(QuickTime)の仕様:Apple Developer Documentation: QuickTime File Format(別のタブで開きます)
- WebM の仕様:The WebM Project: WebM Container Guidelines(別のタブで開きます)
- H.264 の勧告:ITU-T: Recommendation H.264 Advanced video coding for generic audiovisual services(別のタブで開きます)
- video 要素の仕様:WHATWG: HTML Standard「The video element」(別のタブで開きます)
- YouTube の推奨の設定:YouTube ヘルプ: YouTube recommended upload encoding settings(別のタブで開きます)
- Microsoft 365 の推奨の設定:Microsoft サポート: Video formats you can play on Microsoft 365(別のタブで開きます)
- AV1 と、特許についての方針:Alliance for Open Media: Our Story(別のタブで開きます)
- コンテナ形式を替える変換の説明:FFmpeg: ffmpeg Documentation(別のタブで開きます)
確かめる
この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1動画のファイルの拡張子(.mp4 など)が示すのは、どれですか。
拡張子が示すのは、コンテナ形式という入れ物の種類です。中の映像と音声を圧縮するコーデックは、別に決まります。
問い 2同じ MP4 のファイルでも、再生できないことがあるのは、なぜですか。
MP4 はコンテナ形式で、中の映像が H.264 のことも AV1 のこともあります。再生する側は、そのコーデックに対応している必要があります。
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