大学の授業の目的は、学生が「何を学び、身に付けることができたのか」を確かにすることです。ブレンディッドラーニング、反転授業、ハイフレックス型は、その目的のための授業の形で、手段です。ブレンディッドラーニングは対面とオンラインを組み合わせる形の総称で、反転授業はその中の1つの型です。ハイフレックス型は、学生が回ごとに参加の仕方を選べる形です。どの形が合うかは、学生と教員のあいだの、どのギャップを埋めたいかで決まります。
大学の授業の目的は、何ですか
学生一人一人の学修の成果です。中央教育審議会は、答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(別のタブで開きます)」を平成30年11月26日に出しました。答申は「学修者本位の教育への転換」を掲げています。問われるのは「何を学び、身に付けることができたのか」で、個々人の学修成果の可視化が並んで示されています。
中央教育審議会大学分科会の「教学マネジメント指針(別のタブで開きます)」(令和2年1月22日)も、同じ向きです。大学の時間構造を「供給者目線」から「学修者目線」へ転換する視点を、特に重視しています。学生が自らの学修成果を自覚し、エビデンスと共に説明できるようにすることも挙げています。
学生は何を求め、教員には何が求められていますか
学生の答えからは、分かりやすさに比べ、自分の学びへの返事が足りないことが読み取れます。文部科学省の令和7年度「全国学生調査(本格実施)(別のタブで開きます)」には、大学生 319,699人が回答しました。授業で「理解がしやすいような教え方の工夫」があったと答えた学生は 91%です。一方、「適切なコメントが付された提出物の返却」があったと答えた学生は 59%でした。報告は、なかったと答えた41%を、引き続き高い水準にあるとしています。
授業の外の学びの時間は、出席の時間に比べて短い結果でした。2年生では、授業への出席が週16時間以上の学生が 64%でした。予習・復習・課題など授業に関する学習が週5時間以下の学生は 60%です。「授業アンケート等の学生の意見を通じて大学教育が良くなっている」と答えた学生は 57%でした。
オンラインの授業では、自分のペースで学べることが評価されています。令和3年度の「全国学生調査(第2回試行実施)(別のタブで開きます)」では、オンデマンド型の良かった点の最多が「自分のペースで学習しやすい」でした。良くなかった点の最多は「教員とのやりとりがしにくい」です。
教員の側には、学生の学修成果をエビデンスで示すことが求められています。ただ、そのための時間と手段は限られています。大学 ICT 推進協議会(AXIES)の2023年度の調査(別のタブで開きます)では、7〜8割の機関が ICT の活用を妨げる要因があると答えました。主に挙がったのは、教職員の ICT 活用スキルの不足と、予算・時間の不足です。調査の結果を、当社が次のように整理しました。
| 学生の側 | 教員の側 | |
|---|---|---|
| 求めていること | 自分のペースで学べ、分かりやすいこと | 学修成果を、エビデンスで示せること |
| 足りないこと | 提出物へのコメント、教員とのやりとり | 一人一人の理解を見る時間と手段 |
| ギャップを埋める鍵 | 答えると、返事が返ってくること | 学生の答えを、次の授業に生かせること |
3つの言葉は、どう違い、どう重なりますか
3つの違いは、何を組み合わせ、何を入れ替え、誰が選ぶかにあります。ブレンディッドラーニングは、対面とオンラインを組み合わせる形の総称です。反転授業は、その中の1つの型で、授業の前の学びと授業の時間の役割を入れ替えます。ハイフレックス型は、学生が参加の仕方を選ぶ形です。
総称
ブレンディッドラーニング
対面とオンラインを組み合わせる
- 教室の時間の一部を、オンラインの学びに置きかえる
- 反転授業などの型を中に含む
ブレンディッドの1つの型
反転授業
授業の前と授業の時間の役割を入れ替える
- 授業の前に、動画などで内容を学ぶ
- 授業の時間は、演習や議論に使う
参加の仕方の選択
ハイフレックス型
学生が回ごとに参加の仕方を選ぶ
- 教室で受ける
- 同時にオンラインで受ける
- 後から録画で受ける
当社による整理です。
ハイフレックス型の名前は、Brian Beatty が付けました。Beatty は自身の寄稿(別のタブで開きます)に、サンフランシスコ州立大学で2006年に「HyFlex」と呼び始めたと記しています。Beatty は、参加の仕方の選択、同等性、再利用、アクセシビリティの4つを価値に挙げています。EDUCAUSE(別のタブで開きます)(2020年)は、各回の授業を対面、同時オンライン、非同時オンラインで提供する形と説明しています。
形どうしは重ねられます。たとえば、授業の前の動画を全員が見る反転授業にして、授業の回には教室か同時配信か録画かを学生が選ぶ形です。後から録画で受ける回について、文部科学省の遠隔授業の取扱いの資料(別のタブで開きます)は、平成13年文部科学省告示第51号の要件を示しています。設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行い、学生等の意見の交換の機会を確保することです。
研究では、それぞれの形はどう評価されていますか
反転授業の効果は、小さいながらも正の向きです。Låg と Sæle(2019年、AERA Open)は、反転授業と講義型の授業を比べた研究をまとめました。学習の成果では 272の研究で効果量 g = 0.35でした。十分な人数の研究 90に絞ると g = 0.24、出版バイアスを補正すると 0.17です。272のうち 240は大学などの高等教育の研究でした。
同じ分析で、学生の満足度は g = 0.16で、補正すると差はほぼ無くなりました。学生の準備をテストで確かめると、学習の伸びがやや大きくなる兆しも報告されています。
教室の時間を減らしても、学びの成果は保たれた、という整理もあります。Müller と Mildenberger(2021年)は、高等教育のブレンディッドラーニングの 21の効果量をまとめました。教室の時間を 30〜79%減らした授業でも、成果は従来の授業と同等でした。対面と遠隔の学生が同時に参加する形は、Raes ら(2020年)が 47の研究を整理しています。研究の多くは探索的で、質的なものでした。
目的から、どの形を選びますか
先に決めるのは、埋めたいギャップです。形は、そのあとに選びます。当社による整理です。
- 授業の時間を、演習と対話に使いたい:反転授業が合います。授業の前の動画に問いを入れ、準備を確かめます。
- 通学や体調などの事情で、出席できない学生がいる:ハイフレックス型が合います。録画で受ける回にも、問いと返事を用意します。
- 教室の時間の一部を、自分のペースで学ぶ時間にしたい:ブレンディッドラーニングとして、オンデマンドの回を設けます。
- どの形でも、学生の答えに返事を返し、答えを次の授業に生かす仕組みを置きます。
hihaho と Sylavids では、何ができますか
hihaho は、動画の途中に選択式や記述式の問い、分かれ道、メニュー(目次)を入れられるインタラクティブ動画のプラットフォームです。答えによって次に見る場面を変えられます。受講者ごとの点数と合否、答えた内容が記録に残り、CSV で取り出せます。SCORM 1.2、SCORM 2004、xAPI、LTI で LMS に渡せます。YouTube や Vimeo に置いた動画も取り込めます。
Sylavids は、PowerPoint や PDF の資料から、ナレーションのついた説明動画と字幕のファイルをつくる AI 動画生成サービスです。授業のスライドを直せば、撮り直さずに動画をつくり直せます。AI が書いた原稿と音声は下書きで、公開の前に教員が確かめて直します。誰がどう答えたかは、学生の個人情報になります。利用目的を決め、本人に通知または公表します(個人情報保護法)。設計の進め方は、第2回で扱います。
このコラムで言えないことは何ですか
- 反転授業にすれば、成績が上がるとは言い切れません。効果は小さく、出版バイアスを補正するとさらに小さくなります。
- ハイフレックス型が学びの成果を高めるとは言い切れません。研究の多くが探索的で、質的なものです。
- 全国学生調査の大学の回答率は 25.3%で、すべての学生の声を表しているとは言い切れません。
- 紹介した研究の多くは海外の大学で行われたもので、日本の大学にそのまま当てはまるとは言い切れません。
一緒に、授業の目的に合った形を考えませんか
授業の形は、学生に何を身に付けてほしいかと、いまどこにギャップがあるかで決まります。お手元のシラバスと授業の資料から、どの回をどの形にし、どこに問いを置くかを、一緒に整理します。
関連するページ
- 教育機関の方へ:授業動画に問いを入れ、理解を記録する進め方。
- 第2回:ADDIE と認知負荷は、授業動画の設計にどう生かせますか:目的から授業を設計し、答えの記録で授業を直す流れ。
- 動画の途中に問いを入れると、学習は変わりますか:動画の途中の問いについての研究。
- hihaho:動画の途中に問いや分かれ道を入れ、答えと視聴の記録を残せるインタラクティブ動画。
出典
- 学修者本位の教育への転換:中央教育審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」概要(平成30年11月26日、中教審第211号)(別のタブで開きます)
- 供給者目線から学修者目線へ:中央教育審議会大学分科会「教学マネジメント指針」概要(令和2年1月22日)(別のタブで開きます)
- 学生の回答(令和7年度):文部科学省「令和7年度『全国学生調査(本格実施)』の結果について」(令和8年10月9日)(別のタブで開きます)
- オンライン授業の良かった点・良くなかった点:文部科学省「令和3年度『全国学生調査(第2回試行実施)』の結果について」(令和4年10月21日)(別のタブで開きます)
- ICT 活用の阻害要因:大学 ICT 推進協議会 ICT 利活用調査部会「高等教育機関における ICT の利活用に関する調査研究(2023年度調査)結果報告書(速報版)」(2025年5月)(別のタブで開きます)
- HyFlex の名前と4つの価値:Brian Beatty「Hybrid-Flexible Course Design: Implementing student-directed hybrid classes」Media & Learning(2022年1月28日)(別のタブで開きます)
- HyFlex の3つの参加の仕方:EDUCAUSE「7 Things You Should Know About the HyFlex Course Model」(2020年7月7日)(別のタブで開きます)
- オンデマンド型の授業の要件:文部科学省 高等教育局「大学等における遠隔授業の取扱いについて」ほか(令和3年)(別のタブで開きます)
- 反転授業のメタ分析:Låg, Sæle「Does the Flipped Classroom Improve Student Learning and Satisfaction? A Systematic Review and Meta-Analysis」AERA Open(2019年)(別のタブで開きます)
- ブレンディッドラーニングの系統的レビュー:Müller, Mildenberger「Facilitating flexible learning by replacing classroom time with an online learning environment: A systematic review of blended learning in higher education」Educational Research Review 34, 100394(2021年)(別のタブで開きます)
- 同時ハイブリッド型の研究の整理:Raes, Detienne, Windey, Depaepe「A systematic literature review on synchronous hybrid learning: gaps identified」Learning Environments Research 23: 269–290(2020年)(別のタブで開きます)
- 利用目的の特定と通知:e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」(別のタブで開きます)
確かめる
この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1反転授業とブレンディッドラーニングの関係として、正しいのはどれですか。
ブレンディッドラーニングは対面とオンラインを組み合わせる形の総称です。反転授業は、その中で授業の前と授業の時間の役割を入れ替える型です。
問い 2令和7年度「全国学生調査(本格実施)」で、「適切なコメントが付された提出物の返却」があったと答えた大学生の割合はどれですか。
59%でした。91%は「理解がしやすいような教え方の工夫」があったと答えた割合です。
このコラムに出てきた用語
このコラムは、役に立ちましたか。
よろしければ、理由を教えてください。
お名前やメールアドレスなど、個人が分かることは書かないでください。返事は差し上げられません。返事が必要なときは、お問い合わせからどうぞ。
課題を相談する
読んだ内容を、自社の状況に当てはめたいときは、いまの状況と課題をお知らせください。製品が決まっていなくても、相談できます。大学との共同研究と、教材や文書づくりの支援で得た知見をもとに、進め方を一緒に整理します。
