確かめられる形にするには、周知を「配った」で終わらせず、問いへの答えを記録に残します。保険業法、金融庁の監督指針、顧客本位の業務運営に関する原則は、いずれも募集人や従業員への教育や周知の体制に触れています。体制を説明するとき、誰が何を受け、どう答えたかの記録が手がかりになります。
お客様への説明そのものは、コラム「保険の説明は、お客様に伝わっていますか」で扱いました。ここでは、社内と代理店への教育と、改定の周知に絞ります。
法令や監督指針は、教育や周知に何を求めていますか
募集人への教育と管理・指導の体制を整えることを求めています。主な定めは次のとおりです。
| 保険業法 第294条の2 | 顧客の意向を把握し、意向に沿った契約を提案し、内容を説明することを定めています。 |
|---|---|
| 保険業法 第294条の3 | 保険募集人に、内閣府令で定めるところにより、業務の健全かつ適切な運営を確保する措置を求めています。 |
| 保険業法 第283条 | 所属保険会社等が、保険募集人が募集について保険契約者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。 |
| 監督指針 II-4-2-1(4) | 特定保険募集人等の教育・管理・指導として、商品の特性に応じた知識の付与と、適切な募集活動のための十分な教育を挙げています。 |
| 監督指針 II-4-2-2(3)④ | 意向把握・確認の手続を社内規則等で定め、所属する募集人に教育・管理・指導を行うことを挙げています。 |
| 顧客本位の原則 原則7 | 報酬・業績評価体系や従業員研修などの動機づけの枠組みと、ガバナンス体制の整備を求めています。 |
「顧客本位の業務運営に関する原則」は、金融庁が平成29年3月に策定し、令和3年1月と令和6年9月に改訂しました。原則7の注は、各原則で実施する内容を、関係する従業員に周知することにも触れています。
監督指針は、代理店の自己点検だけに頼らない監査の態勢や、課題があれば期限を定めて改善を求めることにも触れています。教育をしたかどうかに加えて、その実効性を確かめる視点が求められています。
業界団体の資格には、どんな更新の仕組みがありますか
証券と損害保険には、決まった周期で学び直す仕組みがあります。
| 証券の外務員 | 損害保険の募集人 | |
|---|---|---|
| 制度 | 日本証券業協会の外務員資格と資格更新研修 | 日本損害保険協会の損保一般試験 |
| 周期 | 原則として登録の日から5年ごとに受講 | 単位ごとに5年の更新制 |
| 受けないと | 資格の停止、のち取り消し | 基礎単位に合格しないと登録・届出ができない |
損保一般試験には、基礎単位と、自動車保険、火災保険、傷害疾病保険の商品単位があります。原則として、扱う商品の単位に合格しなければ、その商品は扱えません。団体の資格は共通の土台です。自社の商品や規程の改定を伝える役目は、各社に残ります。
研修と改定の周知では、どこで行き違いが起きやすいですか
行き違いは、届いたか、読んだか、分かったかの区別がつかないところで起きやすくなります。代理店や販売の現場は数が多く、働く時間も場所もさまざまです。
- 1届いたが読まれない通知や PDF が多く、改定の要点が埋もれる
- 2旧い版が残る手元の資料が改定前のまま使われる
- 3受け手で差が出る代理店ごとに伝え方と深さが変わる
- 4記録が「済」だけ何を理解したかは記録に残らない
当社による整理です。
改定の周知は、研修の時期を待たずに届けたい場面が多くあります。商品の改定、規程の改定、帳票の様式の変更が重なると、何が変わったのかが受け手に見えにくくなります。代理店の募集人は、複数の保険会社の改定を同時に受け取ることもあります。
視聴の完了や確認ボタンの記録は、届いたことは示せます。しかし、改定の要点を取り違えていないかまでは示せません。そこで、要点ごとに問いを置き、答えを残す形が考えられます。
「理解したか」を確かめるには、どんな流れにしますか
改定の要点を短い動画にし、要点ごとに問いを置き、答えを記録して振り返る流れにします。
- 改定の前と後で、何が変わるかを1つずつ書き出します。
- 要点ごとに、取り違えやすい場面を問いにします。正解の理由も添えます。
- 動画の途中に問いを置き、間違えたら該当の場面に戻れるようにします。
- 答えを記録し、間違いの多い問いを、次の説明や資料の直しに使います。
- 改定のたびに、動画と問いを版として残し、いつ誰が何に答えたかを追えるようにします。
- 変更点を書き出す改定の前と後の違いを要点にする
- 短い動画にする要点ごとに区切って説明する
- 問いで確かめる取り違えやすい場面を問う
- 答えを記録する版と日付とともに残す
- 説明を直す間違いの多い点を次に生かす
当社による整理です。
hihaho と Sylavids では、何ができますか
hihaho は、動画の途中に選択式や記述式の問い、分かれ道、目次を入れられるインタラクティブ動画のプラットフォームです。答えによって次に見る場面を変えられます。受講者ごとの点数と合否、答えた内容が記録に残ります。記録は CSV で取り出せるほか、SCORM 1.2、SCORM 2004、xAPI、LTI で LMS に渡せます。
AI が問いと採点の観点を下書きします。内容は担当者が確かめて直します。
Sylavids は、PowerPoint や PDF の資料から、ナレーションのついた説明動画と字幕のファイルをつくるサービスです。資料を直せば、撮り直さずに動画をつくり直せます。改定のたびに説明の動画を更新する場面に向きます。AI が書いた原稿と音声は下書きで、公開の前に人が確かめて直します。
受講や答えの記録を扱うとき、何に気をつけますか
誰がどう答えたかは個人情報になります。個人情報保護法 第17条は利用目的をできる限り特定することを、第21条は利用目的を本人に通知し、又は公表することを定めています。
- 記録を何に使うか(教育の振り返り、体制の説明など)を先に決めます。
- 代理店の募集人の記録を誰が見られるか、保険会社と代理店で取り決めます。
- 記録を残す期間と、消す手順を決めます。
このコラムで言えないことは何ですか
問いに正しく答えたことが、現場で正しく募集できることを示すとは言い切れません。答えの記録があれば、監督指針の求める体制を満たすとも言い切れません。体制の評価は、社内規則や監査を含めた全体で決まります。各条文の適用の条件と例外は、条文と監督指針で確かめてください。
一緒に、改定を確かめられる形で届ける方法を考えませんか
次の改定を1つ選び、要点と問いを書き出すところから始められます。代理店や販売の現場に合う形を、一緒に考えます。
関連するページ
- 金融・保険の方へ:金融・保険の教育と説明の取り組み
- hihaho:動画の途中に問いや分かれ道を入れ、答えと視聴の記録を残せるインタラクティブ動画
- 動画の視聴の記録は、SCORM と xAPI でどこまで残せますか:記録を LMS に渡すときの考え方
- 保険の説明は、お客様に伝わっていますか:お客様への説明を扱うコラム
出典
- 顧客本位の原則の策定と改訂:金融庁「顧客本位の業務運営」(別のタブで開きます)
- 原則7の本文と注:金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」(改訂版、令和6年9月26日公表)(別のタブで開きます)
- 意向把握、業務運営の措置、賠償責任の条文:e-Gov 法令検索「保険業法」(別のタブで開きます)
- 募集人の教育・管理・指導:金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」II-4 業務の適切性(別のタブで開きます)
- 外務員の資格更新研修:日本証券業協会「外務員」(別のタブで開きます)
- 損保一般試験の単位と更新:日本損害保険協会「損保一般試験」(別のタブで開きます)
- 利用目的の特定と通知:e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」(別のタブで開きます)
確かめる
この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1顧客本位の業務運営に関する原則で、従業員研修を含む動機づけの枠組みに触れているのはどれですか。
原則7は、報酬・業績評価体系や従業員研修などの動機づけの枠組みと、ガバナンス体制の整備を求めています。
問い 2日本証券業協会の外務員資格更新研修は、原則としてどの周期で受講しますか。
原則として、外務員の登録を受けた日から5年ごとに受講します。受講しないと、資格の停止や取り消しになります。
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