第1回では、目的・目標と、今の姿を書き出しました。2つを並べると、差が見えてきます。この差を埋めることが、IT を導入する理由になります。第2回では、差を生んでいる改善点を洗い出し、どこから手をつけるかを決めます。
困りごとを、原因までたどる
現場で聞く困りごとは、たいてい「結果」です。「返事が遅い」の後ろには、「答えを探すのに時間がかかる」があり、その後ろには「回答の手引きが、ばらばらの場所にある」があるかもしれません。結果に対してツールを入れても、原因が残れば、困りごとは消えません。
- 困りごと現場で起きていること(返事が遅い)
- 原因なぜ起きるのか(答えを探すのに時間がかかる)
- 真因さらに、なぜか(手引きがばらばらの場所にある)
- 打ち手何を変えるか(手引きを 1か所に集め、探せるようにする)
当社による整理です。
「なぜ」を 2回か 3回くり返すと、たいてい手の届く原因にたどり着きます。原因が人によって違うときは、件数を数えて、多いものから見ます。
IT で解くか、IT 以外で解くか
改善点のすべてが、IT で解くべきものとは限りません。ルールを決める、担当を決める、手順を減らす、といった打ち手で済むこともあります。IT を入れる前に業務のやり方を整えないと、今の手間をそのままシステムに写すことになります。
決まりと役割
ルール、担当、承認の流れを決め直す
- 例:返事の担当を当番制にする
業務のやり方
手順を減らす、まとめる、やめる
- 例:同じ内容の二重入力をやめる
IT
道具で、探す・つなぐ・自動にする
- 例:手引きを 1か所に集めて検索できるようにする
当社による整理です。1つの改善点に、いくつかを組み合わせることもあります。
順番は、効果と手間で決める
改善点が並んだら、それぞれについて「目標にどれだけ効くか(効果)」と「どれだけ手間と費用がかかるか(手間)」を、大・中・小で見積ります。効果が大きく手間が小さいものから始めると、早く成果が見え、次の予算の説明もしやすくなります。
| 手間が小さい | 手間が大きい | |
|---|---|---|
| 効果が大きい | すぐに始める | 計画を立てて取り組む |
| 効果が小さい | 手が空いたときに | 今は見送る |
テンプレート:課題一覧
次の表を、改善点ごとに 1行ずつ埋めます。記入例は、第1回と同じ問い合わせ対応の例です。
| 項目 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 困りごと | 現場で起きていること | 最初の返事まで平均 2日かかる |
| 原因 | なぜ起きるのか(件数があれば添える) | 答えを探すのに 1件あたり平均 20分 |
| 真因 | さらに、なぜか | 回答の手引きが、共有フォルダーとメールに分かれている |
| 打ち手の種類 | 決まり/やり方/IT | やり方(手引きの置き場を決める)+ IT(検索) |
| 効く目標 | 第1回のどの目標に効くか | 最初の返事を 1日以内に |
| 効果 | 大・中・小と、その理由 | 大:探す時間が減れば、返事が早くなる |
| 手間 | 大・中・小と、その理由 | 中:手引きの整理に 2か月ほど |
| 順番 | 効果と手間から | 1番目 |
チェックリスト:第2回を終える前に
- □ 困りごとを、原因と真因までたどった。
- □ 原因の多い・少ないを、件数や時間で確かめた。
- □ IT 以外の打ち手も考えた。
- □ 各改善点が、第1回のどの目標に効くかを書いた。
- □ 効果と手間で、順番を決めた。
- □ 最初に取り組む改善点を、1つか 2つに絞った。
このコラムで言えないこと
- ここで示した流れ、表、テンプレートは、当社による整理です。
- 効果と手間の見積りは、はじめは粗くて構いません。第5回で、予算を説明するときに数字を詰めます。
連載「ビジネスの目標を達成するための IT 導入」
- 第1回 目的・目標と、今の姿を書き出す
- 第2回 改善点を洗い出し、順番を決める(この回)
- 第3回 ビジネス要件とシステム要件を書く
- 第4回 機能要件・非機能要件で、製品を選ぶ
- 第5回 予算を通し、導入後に確かめる
一緒に、整理してみませんか
書き出してみて手が止まったところが、相談のしどころです。お手元のメモのままで構いません。目的の整理から、一緒に考えます。
関連するページ
- 第1回 目的・目標と、今の姿を書き出す:前の回
- 第3回 ビジネス要件とシステム要件を書く:次の回
- 課題を相談する:目的の整理から、一緒に考えます
出典
- 要件定義の進め方(ビジネス要求定義とシステム化要求定義):IPA(情報処理推進機構)「ユーザのための要件定義ガイド 第2版」(2019年)(別のタブで開きます)
確かめる
この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1「返事が遅い」という困りごとに対して、まずすることはどれですか。
困りごとは結果です。原因をたどってから、打ち手を選びます。
問い 2最初に取り組む改善点として、向いているのはどれですか。
効果が大きく手間が小さいものから始めると、早く成果が見え、次の予算の説明もしやすくなります。
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