第3回で、システムに任せることを、システム要件として書きました。第4回では、それを製品と比べられる細かさに分け、同じ物差しで製品を比べます。「何を選べばよいか分からない」は、物差しが無いことから生まれます。
機能要件と非機能要件は、どう違いますか
機能要件は、システムが「何をするか」です。非機能要件は、それを「どのくらいの質で」行うかです。たとえば「言葉で検索できる」は機能要件、「100人が同時に使っても、3秒以内に結果が出る」は非機能要件です。
非機能要件は、書き忘れやすく、あとから直すのに費用がかかります。IPA の「非機能要求グレード」は、非機能要求を 6つの大項目に分けて整理しています。
- 1可用性止まらずに動き続けるか。止まったとき、どう戻すか
- 2性能・拡張性速さ。使う人やデータが増えたときに広げられるか
- 3運用・保守性動かす時間、監視、保守とサポートの体制
- 4移行性今のデータや仕組みを、いつ、どう移すか
- 5セキュリティ誰が何を使えるか。不正な利用を防ぎ、見つけられるか
- 6システム環境・エコロジー置き場所、電源、環境への配慮などの条件
IPA「非機能要求グレード」の大項目を、当社が短く言い換えました。
優先度を付ける
要件のすべてを満たす製品は、まずありません。そこで、要件ごとに「必須」「あると良い」「今回は不要」の 3段階で優先度を付けます。必須を満たさない製品は、その時点で候補から外します。必須が多すぎると候補が残らないので、第1回の目標に直接効くものだけを必須にします。
クラウドサービスなら、何を確かめますか
IPA の「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」は、クラウドサービスを選ぶとき、使うとき、管理するときに確かめる 15の項目を挙げています。そのうち、選ぶときと契約のときに特に関わるものを、確認の項目にまとめました。
- □ どの業務で使うかを、はっきりさせた。
- □ 扱う情報の重要度を確かめた(個人情報、取引先の情報、社外秘など)。
- □ 社内のセキュリティの決まりと、食い違わない。
- □ 事業者とサービスの信頼性を確かめた(第三者の認証、公開している安全対策など)。
- □ 利用者の認証のしかた(多要素認証、シングルサインオンなど)を確かめた。
- □ バックアップを誰が、どこまで行うかを確かめた。
- □ 利用をやめるとき、データを取り出せるかを確かめた。
- □ 適用される法令と、契約の条件を確かめた。
- □ データを保存する国や地域を確かめた。
個人データの取扱いを外部に任せる場合、個人情報保護法の上では、委託先を必要かつ適切に監督することが求められます(個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)3-4-4)。データの保存場所が外国にある場合の扱いも含め、社内の法務や個人情報の担当と一緒に確かめてください。
テンプレート:製品の評価表
要件を行に、候補の製品を列に並べます。満たす・一部満たす・満たさないを ○・△・× で書き、△と×には理由を添えます。製品の説明資料だけで判断せず、試用やデモで確かめた項目には「確認済み」と書きます。
| 要件の番号と内容 | 種類 | 優先度 | 製品 A | 製品 B | 確かめ方 |
|---|---|---|---|---|---|
| SR-01 製品と版で絞り込み、言葉で検索できる | 機能 | 必須 | ○(デモで確認済み) | △(版での絞り込みは追加の設定が要る) | デモで実際の手引きを検索 |
| SR-02 最新の版だけを検索の結果に出す | 機能 | 必須 | ○ | ○ | 試用で、古い版を入れて確かめる |
| NF-01 100人が同時に使っても 3秒以内に結果 | 非機能(性能) | あると良い | ○(開発元の公表) | 未確認 | 開発元に資料を求める |
| NF-02 シングルサインオンに対応 | 非機能(セキュリティ) | 必須 | ○ | ○ | 対応する方式を確かめる |
| NF-03 解約時にデータを取り出せる | 非機能(移行性) | 必須 | ○ | ×(書き出しの形式が限られる) | 利用規約と、書き出しの機能を確かめる |
チェックリスト:第4回を終える前に
- □ システム要件を、機能要件と非機能要件に分けた。
- □ 非機能要件を、6つの大項目に照らして書き漏れがないか見た。
- □ 要件ごとに、必須・あると良い・今回は不要を決めた。
- □ 必須の要件で、候補を絞った。
- □ 評価表の○△×に、理由と確かめ方を書いた。
- □ 試用やデモで、必須の要件を実際に確かめた。
- □ クラウドサービスの確認の項目と、個人情報の扱いを、担当と一緒に確かめた。
このコラムで言えないこと
- 評価表の製品 A・B と、その○△×は、説明のための例です。実在の製品を評価したものではありません。
- 非機能要求グレードは、主に業務システムの基盤を想定した整理です。クラウドサービスを選ぶときは、項目を読み替えて使ってください。
- 法令の求めに合っているかは、社内の法務や専門家に確認してください。
連載「ビジネスの目標を達成するための IT 導入」
- 第1回 目的・目標と、今の姿を書き出す
- 第2回 改善点を洗い出し、順番を決める
- 第3回 ビジネス要件とシステム要件を書く
- 第4回 機能要件・非機能要件で、製品を選ぶ(この回)
- 第5回 予算を通し、導入後に確かめる
一緒に、整理してみませんか
書き出してみて手が止まったところが、相談のしどころです。お手元のメモのままで構いません。目的の整理から、一緒に考えます。
関連するページ
- 第3回 ビジネス要件とシステム要件を書く:前の回
- 第5回 予算を通し、導入後に確かめる:次の回
- 課題を相談する:目的の整理から、一緒に考えます
出典
- 要件定義の進め方(ビジネス要求定義とシステム化要求定義):IPA(情報処理推進機構)「ユーザのための要件定義ガイド 第2版」(2019年)(別のタブで開きます)
- 非機能要求の 6つの大項目:IPA「非機能要求グレード」実践セミナーの資料(非機能要求グレード2018 に対応、PDF)(別のタブで開きます)
- クラウドサービスを選ぶときの確認項目:IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(PDF)(別のタブで開きます)
- 個人データの取扱いの委託と、委託先の監督:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-4-4(別のタブで開きます)
確かめる
この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1非機能要件の例として、合っているのはどれですか。
速さや止まりにくさなど、「どのくらいの質で」を表すのが非機能要件です。ほかの 2つは機能要件です。
問い 2評価表で、必須の要件を満たさない製品はどう扱いますか。
必須を満たさない製品は候補から外します。そのため、必須は目標に直接効くものだけに絞ります。
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