第2回で、最初に取り組む改善点を決めました。次は、それを実現するために何が要るのかを、言葉にして書きます。これが要件です。要件があいまいなまま製品を選ぶと、導入してから「こんなはずではなかった」が起きます。
ビジネス要件とシステム要件は、どう違いますか
IPA の「ユーザのための要件定義ガイド 第2版」は、要件定義を、ビジネス要求定義と、システム化要求定義に分けています。業務の観点から要求を集めて定め、それを機能要件・非機能要件の観点で仕様にしていく、という流れです。この連載では、前者を「ビジネス要件」、後者を「システム要件」と呼びます。
- 目的・目標何のために、どこまで(第1回)
- 改善点どこを直すか(第2回)
- ビジネス要件業務として、何ができればよいか
- システム要件そのうち、システムに何を任せるか
- 機能・非機能要件システムの細かな条件(第4回)
IPA の要件定義ガイドの流れをもとに、当社が整理しました。
ビジネス要件は、どう書きますか
ビジネス要件は、業務の言葉で書きます。システムの言葉(画面、データベース、連携など)はまだ使いません。主語は、業務を行う人です。
- 誰が:サポート課の担当者が、
- いつ・何をきっかけに:問い合わせを受けたときに、
- 何を:その製品と版に合う回答の手引きを、
- どの程度で:1分以内に見つけられる。
- なぜ:最初の返事を 1日以内にするため(第1回の目標)。
最後の「なぜ」を必ず書きます。目標とつながらない要件は、あとで削る候補になります。
システム要件は、どう書きますか
システム要件は、ビジネス要件のうち、システムに任せる部分を書きます。人が判断すること、決まりで解くことは、ここには入れません。
| ビジネス要件 | システムに任せること(システム要件) | 人や決まりで行うこと |
|---|---|---|
| 手引きを 1分以内に見つけられる | 製品と版で絞り込み、言葉で検索できる | 手引きの置き場所と、更新の担当を決める |
| 古い手引きを使わない | 最新の版だけを検索の結果に出す | 改訂したら、古い版を公開から外す手順を決める |
| 担当者が答えに迷わない | 問い合わせの内容から、合う手引きの候補を出す | 最終的にどれを使うかは、担当者が判断する |
テンプレート:要件シート
1つの要件を 1行に書きます。番号を付けておくと、第4回で製品を比べるときや、導入後に確かめるときに、話がずれません。
| 項目 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 番号 | BR-01 のように | BR-01 |
| ビジネス要件 | 誰が、いつ、何を、どの程度で | 担当者が、問い合わせを受けたときに、合う手引きを 1分以内に見つけられる |
| なぜ(効く目標) | 第1回の目標とのつながり | 最初の返事を 1日以内にするため |
| システム要件 | システムに任せること | SR-01:製品と版で絞り込み、言葉で検索できる |
| 人・決まりで行うこと | システムに任せないこと | 手引きの置き場所と更新の担当を決める |
| 確かめ方 | できたかどうかの見方 | 10件の問い合わせで、見つけるまでの時間を測る |
| 決めた人・日付 | 誰が承認したか | サポート課長、10月15日 |
チェックリスト:第3回を終える前に
- □ ビジネス要件を、業務の言葉で書いた(システムの言葉を使っていない)。
- □ どの要件にも「なぜ(効く目標)」が書いてある。
- □ システムに任せることと、人や決まりで行うことを分けた。
- □ 要件ごとに、確かめ方を書いた。
- □ 使う人と、決める人に読んでもらい、承認を得た。
- □ 要件に番号を付けた。
このコラムで言えないこと
- 「ビジネス要件」「システム要件」の言葉の使い分けは、会社や文献によって違います。この連載では、IPA のガイドの区分をもとに、当社が呼び名を決めています。
- テンプレートは当社による整理です。大きなシステムの開発では、IPA のガイドなどを参照し、より詳しく定めてください。
連載「ビジネスの目標を達成するための IT 導入」
- 第1回 目的・目標と、今の姿を書き出す
- 第2回 改善点を洗い出し、順番を決める
- 第3回 ビジネス要件とシステム要件を書く(この回)
- 第4回 機能要件・非機能要件で、製品を選ぶ
- 第5回 予算を通し、導入後に確かめる
一緒に、整理してみませんか
書き出してみて手が止まったところが、相談のしどころです。お手元のメモのままで構いません。目的の整理から、一緒に考えます。
関連するページ
- 第2回 改善点を洗い出し、順番を決める:前の回
- 第4回 機能要件・非機能要件で、製品を選ぶ:次の回
- 課題を相談する:目的の整理から、一緒に考えます
出典
- 要件定義の進め方(ビジネス要求定義とシステム化要求定義):IPA(情報処理推進機構)「ユーザのための要件定義ガイド 第2版」(2019年)(別のタブで開きます)
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この記事の内容から、2 問です。選ぶと、その場で答えと説明が出ます。
問い 1ビジネス要件を書くときの主語として、合っているのはどれですか。
ビジネス要件は業務の言葉で書き、主語は業務を行う人です。システムに任せることは、システム要件に書きます。
問い 2要件ごとに「なぜ(効く目標)」を書く理由は、どれですか。
目標とつながらない要件は、削る候補になります。予算の説明でも、要件と目標のつながりが問われます。
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